乳牛とBCS:コントロール

前回書いたBCSの考えについて、想定外に多くの反響があって、
関係者のBCSへの意識の高さを感じました。
補足をしておくと、BCSが高い状態を良いとした内容ではなく、
BCSが上がってしまう事に意識が行き過ぎて、必要な栄養を満たせず、
乳量が伸び悩んだり(能力が活かしきれていない)、
にもかかわらず、子宮の回復が遅かったり、
発情が鈍化したり、種止まりが悪かったり、
乳房炎が多かったり、周産期疾病が減らなかったり。
本末転倒な状態になってませんか?ならBCSから餌を考える事から、
一度離れてみてはどうでしょうか?
乳量、繁殖、病気よりも優先順位としては下位で良いんじゃない?
といった内容を書きたかったつもりでした。

一方で、BCSがどんどん上がっていくというのも問題視すべきと思います。
そこで、今回はBCSのコントロールについて考えを書いてみます。

BCSを餌でコントロールするのは最終手段だと私は思っています。
その前に、脂肪を蓄積させてしまう脂肪細胞を増やさないこと。
これに尽きるかと思います。
生後8~10か月ころに脂肪細胞が盛んに増えるそうです。
この細胞が、後に余分なエネルギーを脂肪として取り込む細胞になります。
この数が少なければ太りにくい、多ければ太りやすい。
これを決定づけるのが、生後約8か月頃までというわけです。
もちろん、遺伝的な要因もあるかと思います。
そんな感じなので、ミルクの脂肪を減らし、タンパクを増やす必要があるし、
育成初期段階の給与飼料のCP濃度は18~20%で管理することが
管理水準にさえなっています。
エネルギーに対するタンパクを濃くすることは、
ルーメン内で微生物にエネルギーを使わせることになりますから、
太りにくくなるだけでなく、体躯が大きくなります。
くわえて、生後から3か月、初回発情前後の乳腺の発達にも好影響が
期待できるというので、高たんぱくでの管理はやらない手はない。
というのが現代の私の知ってる給与技術です。

このような体の仕組みが出来上がっていく育成段階からの
管理改善がBCSの適正コントロールに必要。
と考えています。

BCSが上がるから、搾乳牛の給与メニューから配合を削ってませんか?
これは、大きな間違いだと思います。何の解決にもなってないどころか、
問題が増幅すると思います。
脂肪細胞が多い牛は、乳が出ていなければ草でも太ります。

こうした育成段階からのコントロールがあって、
太りにくい搾乳牛を作る。
これが、太りにくく、乳量もだして、繁殖も回る牛に必要な要素だと思います。

それでも、どーしても、太るのが気になる意識高い系の方は
しっかり乳量搾って、かつ繁殖も上手く回すように
種が止まるまでは、しっかり餌を食わせる事が最重要だと思います。
餌でエネルギーを制限したい場合、ルーメンの働きを活かすべきです。
まず、脂肪系の飼料をゼロにする。
そして、これまでのメニューに加えて、CPの増給を行います。
これによって、ルーメン内の糖が菌に利用され、糖としての吸収が減らせます。
どころか、タンパクが増え、牛の状態が良くなります。
ただ、注意すべきは、MUNが高い状態でこれをやってもあまり意味が無いです。
便が緩くなれば、活発になった微生物の活動に応える繊維の増給が不可欠です。
さらに、場合によってはタンパクの増給ではなく、糖の増給が有効な場合もあります。
これは乳量を搾れてない牛群で適用されると思いますが、
ここまでくると、完全に餌のバランスと考えの見直しが必要だと思います。

そして、やっぱり思うんです。
現代の飼料設計技術は十分すぐれてますから
それに則って餌をやって、しっかり食べさせて、
しっかり繁殖を回す、乳を搾る。
そのうえで、太る牛はそういう牛なんじゃない?
牛だって、生き物ですから、ねぇ。。。

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